健康食品・サプリメント情報の科学的根拠? その信頼性を判断するチェックリスト
インターネットやメディアには、様々な健康食品やサプリメントに関する情報が溢れています。「科学的根拠がある」「研究で効果が確認された」といった表現を目にすることも多いでしょう。しかし、その「科学的根拠」の信頼性は一様ではありません。誤った情報に基づき、期待した効果が得られないばかりか、健康被害につながる可能性もゼロではありません。
このページでは、健康食品やサプリメントに関する情報の真偽、特に科学的根拠とされる部分の信頼性を判断するための具体的なチェックポイントをご紹介します。
健康食品・サプリメント情報に見られる誤情報のパターン
まずは、注意が必要な情報パターンを知っておきましょう。
- 効果効能の断定: 「〇〇を食べるだけで△△が治る」「このサプリメントは◇◇に劇的な効果がある」のように、特定の食品や成分が病気を直接治す、あるいは劇的な改善をもたらすと断定する表現は、医薬品のような効果効能を標榜するものであり、多くの場合、根拠が不十分です。
- 万能性の主張: 特定の成分が、がん、糖尿病、高血圧など、多くの異なる疾患や症状に効果があるかのように主張する情報は疑ってかかるべきです。人間の体は複雑であり、一つの成分が多くの病気に万能な効果を持つ可能性は極めて低いと考えられます。
- 体験談や個人の感想のみを根拠とする: 「これを飲んだらすぐに体調が良くなった」「家族の病気が劇的に改善した」といった個人の体験談は、その人の体質や状況、あるいは他の要因(食事、生活習慣、医療機関での治療など)が影響している可能性があり、科学的な根拠としては不十分です。
- 根拠とされる研究論文の質が低い・不明確: 「研究で明らかになった」と謳われていても、その研究がどのようなものか具体的に示されていない、あるいは示されていてもその研究の質が低い場合があります。例えば、動物実験や細胞レベルの研究結果をヒトへの効果のように説明する、研究対象者が極めて少ない、研究方法に偏りがある、といったケースです。
科学的根拠の信頼性を判断するためのチェックポイント
情報源が提示する「科学的根拠」が本当に信頼できるものかを見極めるために、以下の点をチェックしましょう。
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情報源は信頼できますか?
- 誰がその情報を発信していますか?(個人のブログ、企業の販売ページ、ニュースサイト、医療機関、大学、公的機関など)
- 情報発信者の専門性や利益相反はありませんか?(製品の販売元や関連企業からの情報には、特に注意が必要です。中立的な立場からの情報であるかを確認しましょう。)
- 公的な機関(厚生労働省、国立健康・栄養研究所など)や、信頼できる医療機関・研究機関からの情報であれば、一般的に信頼性は高いと言えます。
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根拠とされる「研究」の種類と質はどうですか? 科学的な根拠には様々なレベルがあります。ヒトでの効果を検討した研究の中でも、信頼性の高さは異なります。
- ヒトでの研究ですか? 動物実験や細胞レベルの研究は、ヒトでの効果を必ずしも保証するものではありません。
- どのような研究デザインですか?
- 最も信頼性が高いとされるのは、ランダム化比較試験(RCT)です。これは、被験者をランダムに二つのグループ(介入を受けるグループと受けない、あるいは別の介入を受けるグループ)に分け、結果を比較する研究です。さらに、被験者や研究者どちらも、あるいは両方がどのグループに属するかを知らない盲検化が行われていると、より信頼性が高まります。
- 観察研究(コホート研究、症例対照研究など)は、特定の要因と健康状態の関連性を示すことはできますが、それだけでは原因と結果(因果関係)を明確に証明することは難しい場合があります。
- 研究の規模は十分ですか? 研究対象者(被験者)の数が少なすぎると、結果が偶然によるものである可能性が高まります。
- 研究結果はどこで発表されていますか? 査読付きの学術誌に掲載された研究は、他の専門家による評価(査読)を受けているため、信頼性が高い傾向があります。プレスリリースや企業のウェブサイトのみで発表されている場合は、注意が必要です。
- 複数の研究で同様の結果が出ていますか? 一つの研究結果だけで安易に判断せず、複数の信頼できる研究で同様の結果が確認されているかを確認することが重要です。複数の研究結果を統合して評価するシステマティックレビューやメタアナリシスは、個別の研究よりも信頼性が高いとされています。
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情報の客観性はありますか?
- 良い点だけでなく、考えられるリスクや副作用、あるいは効果がない場合があることについても言及していますか?
- 都合の良い研究結果だけを強調し、否定的な、あるいは関連性のない研究結果を無視していませんか?
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公的な見解や専門家の総意はどうですか?
- その食品や成分について、国の機関(厚生労働省、消費者庁など)や、関連する学会はどのような見解を示していますか? ガイドラインやQ&Aなどを参考にすることができます。
- 信頼できる専門家(医師、管理栄養士、薬剤師など)の意見はどうですか?
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あまりに都合の良い話ではありませんか? 「すぐに効果が出る」「食べるだけで病気が治る」「他の治療は不要になる」など、常識から考えてあまりに都合の良い、あるいは極端な主張は、高い確率で信頼性が低い情報です。
誤った情報を他者に説明する際の考慮事項
もし、あなたが信頼できないと思われる健康食品・サプリメントに関する情報を信じている家族や友人から相談を受けた場合、どのように伝えれば良いでしょうか。
- 頭ごなしに否定しない: 相手がなぜその情報を信じているのか、どのような不安や期待があるのかを理解しようと努める姿勢が大切です。
- 断定を避ける: 「それは絶対に間違いです」と断定するのではなく、「〇〇という情報もあるようですが、信頼できる公的な機関では△△と説明されています」「この研究は少し古い情報のようですね」のように、具体的な根拠や疑問点を提示する方が受け入れられやすい場合があります。
- 信頼できる情報源を示す: 公的な機関のウェブサイトや、中立的な立場の専門家が監修した情報源などを具体的に示すことで、相手自身が情報を確認するきっかけになります。
- 専門家への相談を勧める: 最も安全で確実なのは、医師や管理栄養士、薬剤師などの専門家に相談することです。「一度、かかりつけの先生に聞いてみるのが安心だと思いますよ」と、専門家の意見を仰ぐことの重要性を伝えましょう。
まとめ
健康食品やサプリメントに関する情報は玉石混淆です。情報源の信頼性、特に科学的根拠とされる研究の種類や質を複数の視点からチェックすることが非常に重要です。一つの情報だけで安易に判断せず、疑問を持ったら他の信頼できる情報源と照らし合わせる習慣をつけましょう。そして、最も大切な健康に関する判断は、必ず医療や栄養の専門家と相談しながら行うようにしてください。正確な情報を見極める力が、あなたの健康を守ることにつながります。