「医師監修」「学会認定」の健康情報、その信頼性をどう見極めるか
インターネット上で健康に関する情報を検索する際、「医師監修」「学会認定」といった表記を目にすることが多くあります。これらの言葉は、情報が信頼できるものであるかのように見せかけ、多くの人々に安心感を与えます。しかしながら、これらの表記があるからといって、必ずしも情報全体が科学的に正確で、あなたやあなたの家族にとって最善であるとは限りません。
この記事では、「医師監修」や「学会認定」と謳われている健康情報の信頼性を、どのように見極めるべきかについて、具体的なチェックポイントを交えて解説します。情報の真偽を見分け、他者へ正確な情報を伝える一助となれば幸いです。
「監修」「認定」表記が信頼性の根拠と見なされやすい背景
私たちは、医療や健康に関する情報を求める際に、専門家や公的機関の意見を重視する傾向があります。「医師」や「学会」といった権威性のある言葉は、その情報に一定の信憑性を与えるものと捉えられがちです。特に、インターネット上には玉石混交の情報が溢れているため、信頼できる情報源を見分ける手がかりとして、「監修」や「認定」といった表記が有効であると考えるのは自然なことです。
「監修」「認定」表記がある情報に見られる落とし穴
しかし、これらの表記がある情報にも、注意すべき点がいくつか存在します。
- 監修者・認定機関の不明確さ: 具体的な医師の氏名、所属機関、専門分野が明記されていない場合があります。「〇〇大学病院医師」といった曖昧な表記や、実在しない可能性のある名称が使われていることもあります。
- 監修・認定の範囲の限定: 記事やサイト全体ではなく、一部のページや特定の製品情報のみが監修・認定されているケースがあります。その範囲が明確に示されていないと、読者は情報全体が保証されていると誤解する可能性があります。
- 基準の不透明さ: どのような基準で「監修」や「認定」が行われたのかが不明確である場合があります。特定の団体の独自の基準であったり、科学的根拠に基づかない基準であったりする可能性も否定できません。
- 情報の偏りや古い情報: 監修者の個人的な見解や、古い研究結果に基づいており、最新の科学的知見と異なっている場合があります。また、特定の立場や製品を擁護するための情報に偏っていることも考えられます。
- 商業目的との関連: 特定の健康食品、サプリメント、健康機器などの販売促進を目的とした情報に、「医師監修」や「学会認定」の表記が付されていることが多くあります。この場合、客観的な情報提供よりも、製品のメリットを強調する内容になりがちです。
「監修」「認定」表記のある情報の信頼性を見極める具体的なチェックポイント
これらの落とし穴を避け、情報の信頼性を適切に判断するために、以下の点をチェックすることをおすすめします。
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監修者・認定機関は明確か?
- 具体的な氏名、所属機関(病院名や大学名など)、役職、専門分野が明記されているか確認してください。
- 明記されている場合、その医師や研究者が本当にその分野の専門家であるか、所属機関は実在するかを別途検索して確認するとよいでしょう。公的な医療機関や大学のウェブサイトなどで、その医師のプロフィールを確認できるかどうかが一つの手がかりになります。
- 「〇〇認定」「△△推薦」といった表記の場合、その「〇〇」や「△△」がどのような団体なのか、信頼性のある学術機関や公的な機関であるかを確認してください。設立目的や活動内容、運営基盤などを調べることで、その信頼性をある程度判断できます。
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監修・認定の範囲と基準は明記されているか?
- 記事やサイトのどの部分が、どのような基準に基づいて監修・認定されているのかが具体的に説明されているか確認してください。
- 「本記事は〇〇医師により監修されました」というだけでなく、「本記事の〇〇に関する情報は、最新の研究に基づき〇〇医師により医学的な正確性が確認されています」といった具体的な記述があるかどうかが重要です。
- 認定マークが付いている場合、そのマークの意味や認定基準について、認定を行っている機関の公式サイトで詳しく説明されているかを確認してください。
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情報源は透明か?
- 監修や認定の根拠となった研究論文、統計データ、公的機関の発表などが具体的に引用されているか確認してください。信頼できる情報であれば、その元となる情報源が示されていることが多いです。
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情報の公開日や更新日は明記されているか?
- 情報がいつ公開されたものか、また、最終更新日はいつかが明記されているか確認してください。医療や健康に関する情報は日々更新されるため、古い情報のまま監修されている可能性も考慮する必要があります。
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広告・商業目的との関連はないか?
- その情報が、特定の製品やサービスの購入に誘導する内容になっていないか、冷静に判断してください。
- 監修者が、紹介されている製品やサービスを提供する企業と経済的な利害関係(顧問、株主、開発への関与など)がないかどうかも、可能な範囲で確認すると信頼性判断の助けになります。利益相反の開示がされているかどうかもチェックポイントです。
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複数の信頼できる情報源と比較する
- 最も重要なステップの一つです。その情報が、厚生労働省、国立研究開発法人、大学病院のサイトなど、公的機関や学術機関が発信する情報と一致するかを必ず比較してください。複数の信頼できる情報源で同じ情報が得られるかどうかが、その情報の信頼性を判断する上で非常に強力な指標となります。
誤った「監修」「認定」情報について他者に説明する際のポイント
あなたが情報の真偽を見分けられたとしても、それを周囲の人々(患者さんやご家族など)に分かりやすく伝えることは容易ではありません。特に、「医師監修と書いてあったのに!」と強く信じ込んでいる相手に対しては、感情的に否定するのではなく、冷静かつ客観的な説明が求められます。
- 共感と理解を示す: まずは、「医師監修と聞くと、信頼できる情報だと感じますよね」といった共感の言葉で相手の気持ちを受け止めます。
- 「だからこそ確認が大切」と伝える: その上で、「ただ、残念ながら中には少し注意が必要な情報もあるんです。医師監修と書かれていても、例えば『どこの誰が監修したのか』『いつの情報なのか』などが分からないこともあって、それを確認することが、より確かな情報を得るために大切なんです」といったように、確認が必要な理由を丁寧に説明します。
- 具体的なチェックポイントを提示: 上記のチェックポイント(監修者の確認、更新日の確認、他の情報源との比較など)を、相手にも分かりやすい言葉で具体的に伝えます。「この情報の場合、監修した先生のお名前が載っていないみたいですね」「書かれていることが、例えば厚生労働省のホームページに載っている情報と少し違うようです」といった具体的な事実を提示すると理解を得やすくなります。
- 特定の情報源を推奨する: 信頼できる情報源(公的機関のサイト、病気に関する信頼性の高いガイドラインなど)を具体的に提示し、今後の情報収集の参考にしてもらうよう促します。
まとめ
インターネット上の健康情報における「医師監修」「学会認定」といった表記は、信頼性を判断する上での一つの手がかりにはなり得ますが、それだけで情報の真偽を安易に判断することは危険です。監修者や認定機関の実態、監修・認定の範囲と基準、情報の新しさ、そして商業目的との関連性など、複数のチェックポイントを確認することが重要です。
また、得られた情報の信頼性を他者へ伝える際には、相手の立場に配慮しつつ、具体的な根拠(確認すべき点や比較すべき情報源など)を冷静に示すことが有効です。情報リテラシーを高め、科学的根拠に基づいた正確な情報を見分ける力を身につけることは、自分自身の健康を守るだけでなく、大切な人々を誤った情報から守るためにも非常に重要です。