健康情報の要約や抜粋、その信頼性をどう見極めるか:元の情報を見抜く視点
インターネットやSNS上では、健康情報が短い要約や抜粋の形で共有されることが頻繁にあります。これは情報を手軽に把握できる利便性がある一方で、注意が必要な点も多く含まれています。情報の「良いとこ取り」や意図的な切り取りによって、元の情報が持つ正確な意味合いや、重要な条件、注意点などが失われてしまうリスクがあるからです。
なぜ健康情報の要約・抜粋に注意が必要か
元の情報から一部だけを抜き出す、あるいは要約する過程では、以下のようなリスクが生じやすくなります。
- 文脈の喪失: 情報がどのような背景や条件下で得られたものかが省かれることで、全く異なる意味に受け取られることがあります。
- 重要な情報の欠落: 対象者、期間、方法、限界、副作用、相互作用、あるいは研究の限界といった、本来非常に重要であるべき情報が省略されることがあります。
- 意図的な強調・単純化: 特定の製品やサービスを有利に見せるため、あるいは特定の結論を印象づけるために、都合の良い部分だけが強調され、全体像が歪められることがあります。複雑なメカニズムが過度に単純化され、誤解を招く場合もあります。
- 誇張: 元の情報では控えめに表現されていた可能性や示唆にすぎない内容が、「効果がある」「劇的に改善する」といった断定的な表現に変わってしまうことがあります。
これらのリスクにより、要約や抜粋された情報だけを鵜呑みにすると、誤った健康法を試したり、不要な不安を感じたり、本来必要な医療を見送ったりする可能性が生じます。
要約・抜粋健康情報の信頼性を見極める具体的なチェックポイント
健康情報の要約や抜粋に接した際に、その信頼性を判断するための具体的な視点をいくつかご紹介します。
-
元の情報源を確認する:
- 最も重要かつ基本的なステップは、その要約や抜粋がどこから来ている情報なのか、元の情報源が示されているかを確認することです。
- もし元の情報源へのリンクや具体的な名称(論文名、研究機関名、報告書名など)が示されていれば、可能な限りそこにアクセスし、内容を確認してください。信頼できる情報源(後述)であるかどうかも重要な判断材料です。
- 元の情報源が不明、あるいはすぐに確認できない場合は、その要約・抜粋情報の信頼性は低いと判断するのが賢明です。
-
元の情報の全体像と比較する:
- 元の情報源を確認できた場合、要約・抜粋されている部分が、元の情報の全体の中でどのような位置づけにあるのかを確認します。
- 例えば、ある研究結果について述べられている場合、その研究の対象者、規模、期間、方法などを確認し、要約されている結果がその研究全体の結論なのか、あるいは一部の予備的な結果にすぎないのかなどを比較します。特定の条件下でのみ見られた効果を、一般的な効果として強調していないかなどを確認することも有効です。
-
重要な情報の欠落を見抜く:
- 要約・抜粋された情報に、本来であれば伴うべき重要な条件や注意点、リスクに関する情報が抜け落ちていないかを確認します。
- 例えば、「〇〇で癌予防」という情報があった場合、「どの種類の癌か」「どの程度の量を、どのくらいの期間摂取した場合か」「どのような集団(年齢、性別、健康状態など)での話か」といった限定条件や、「同時に考えられるリスクや副作用」などが示されているかを確認します。これらの情報が欠落している場合は、元の情報が都合よく切り取られている可能性が高いです。
-
その情報が作成された意図を推測する:
- なぜ、この部分が要約または抜粋されて発信されているのか、その意図を考えてみます。
- 特定の製品やサービスへの誘導がないか、過剰な不安や期待を煽る目的はないかなどを冷静に観察します。情報に特定の利害関係が絡んでいる場合、その内容は加工されている可能性が高いと考えられます。
-
他の信頼できる情報源と比較する:
- その要約・抜粋情報の内容について、厚生労働省、国立健康・栄養研究所、国内外の主要な研究機関や学会、信頼できる医療機関のウェブサイトなど、複数の異なる信頼できる情報源がどのように報告しているかを確認します。
- 多くの信頼できる情報源が同様の内容を伝えているか、あるいはその要約・抜粋情報だけが突出して肯定的または否定的な主張をしているかなどを比較することで、情報の偏りや信憑性を判断する手がかりが得られます。
信頼できる情報源を活用する
健康情報の要約や抜粋の信頼性を判断する上で、最も確実な方法の一つは、常に信頼できる情報源を「正」として参照する習慣を持つことです。公的機関、中立的な研究機関、主要な学会などが提供する情報は、専門家による検討を経ており、一般的に信頼性が高いと考えられます。インターネットで情報を検索する際にも、こうした情報源からの情報を優先的に参照することをおすすめします。
誤った要約・抜粋情報について他者に説明する際のポイント
身近な人が誤った要約・抜粋情報に影響を受けている場合、一方的に間違いを指摘するのではなく、元の情報を確認することの重要性を優しく伝えることが有効です。「この情報はこういう風に書いてあるけれど、元の情報にはこういう大事な条件が書いてあるみたいですよ」「他のサイトでは、少し違う伝え方をしていますね。いくつか見てみるのも良いかもしれませんね」といったように、断定的な表現を避け、一緒に元の情報を確認したり、複数の情報源を見比べることを提案したりする姿勢が、相手に受け入れられやすくなります。
まとめ
健康情報の要約や抜粋は、手軽に情報を得られる反面、情報が持つ本来の意味や重要な要素が失われているリスクを常に伴います。要約・抜粋情報に接した際は、安易に飛びつくのではなく、必ず元の情報源を確認し、全体像、欠落している情報、発信者の意図などを冷静に見極めることが重要です。複数の信頼できる情報源を参照し、情報の真偽を多角的に判断する習慣を身につけることが、インターネット上の健康情報と適切に向き合うための鍵となります。情報リテラシーを高め、正確な情報に基づいて、ご自身や大切な方の健康を守る行動を選択していきましょう。