健康情報クリアガイド

健康情報における「研究」の信頼性を見抜く:科学論文のチェックポイント

Tags: 健康情報, 研究, 科学的根拠, 論文, 信頼性, 情報リテラシー, デマ, 誤情報

インターネットやSNSで目にする健康情報の中には、「最新の研究で明らかになった」「科学的に証明された」といった言葉がよく使われます。これらの言葉は、情報に信頼性があるかのように感じさせますが、その裏付けとなる「研究」が本当に信頼できるものなのかを見極めることは非常に重要です。

全ての研究が等しく信頼できるわけではありません。研究の質や方法、発表のされ方によっては、誤解を招いたり、意図的に情報を歪めたりする可能性があります。ここでは、健康情報における「研究結果」の信頼性をどう判断するか、具体的なチェックポイントをご紹介します。

なぜ「研究結果」の信頼性確認が必要なのか?

「研究に基づいている」と聞くと、無条件に正しい情報だと思いがちです。しかし、以下のような理由から、その信頼性を確認する視点を持つことが不可欠です。

信頼できる「研究」を見抜く科学論文のチェックポイント

健康情報の根拠として示されているのが「科学論文」である場合、以下の点をチェックすることで、その信頼性をある程度判断できます。

1. 一次情報(原著論文)に当たれるか?

2. 査読(Peer Review)を受けているか?

3. 研究デザインは適切か?

4. 利益相反(Conflict of Interest: COI)は表明されているか?

5. 他の信頼できる情報源との整合性は?

信頼できる情報源の活用

健康情報における研究の信頼性を判断する上で、信頼できる情報源を知っておくことも役立ちます。

誤った「研究に基づいた」情報を他者に説明する際のポイント

医療従事者の方が患者さんやご家族に、インターネット上の情報について説明する際には、一方的に否定するのではなく、相手の立場に配慮しつつ、冷静かつ論理的に説明することが重要です。

  1. 共感と傾聴: まずは「〇〇についてご心配なのですね」「△△という情報をご覧になったのですね」など、相手の状況や気持ちを受け止め、話をよく聞きます。
  2. 情報の確認: どのような情報を見たのか、可能であれば具体的に教えてもらいます。(例:「〇〇というサイトに、〜と書いてありました」)
  3. 判断の視点を提供: その情報がなぜ信頼性に欠ける可能性があるのかを、専門用語を避け、分かりやすい言葉で具体的に説明します。「その情報が基づいているという研究は、人数がとても少ない研究のようですね」「信頼できる専門家による確認がされていない可能性もありますね」といったように、今回ご紹介したようなチェックポイントを応用して説明します。
  4. 信頼できる代替情報を提供: 公的機関や専門学会など、信頼できる情報源を紹介し、「こちらのサイトの情報は、多くの専門家が確認していますから、より参考になると思いますよ」などと伝えます。
  5. 断定を避ける: 「あの情報は絶対に間違っている」といった断定的な言い方は避け、「現時点では科学的な根拠が十分ではないと考えられています」「さらなる検証が必要です」といった、科学的な姿勢に基づいた説明を心がけます。

結論

健康情報に触れる際に「研究によると」「科学的に証明された」といった言葉を見たとき、それが信頼できる根拠に基づいているかを冷静に見極める視点を持つことが、情報リテラシーを高める上で不可欠です。特に「科学論文」を根拠とする情報については、原著論文の確認、査読の有無、研究デザイン、利益相反、他の情報源との整合性といった点をチェックすることで、その信頼性を判断する一助となります。

全ての人が専門家レベルで論文を読み解く必要はありませんが、どのような点に注意すれば信頼性の高い情報にたどり着けるのかを知っておくことは、ご自身の健康を守り、また大切な方に正確な情報を伝える上できっと役に立つはずです。信頼できる情報源を積極的に活用し、常に複数の視点から情報を確認することを習慣づけましょう。