健康情報に潜む「資金源」によるバイアス、どう見抜くか
インターネットや様々なメディアには、健康に関する情報が溢れています。その中には、科学的根拠に基づいた信頼できる情報がある一方で、特定の意図や目的を持って発信された、偏りのある情報も少なくありません。特に、情報の「資金源」が、その内容に大きな影響を与えている場合があります。
本記事では、健康情報に潜む資金源によるバイアスを見抜くための具体的なチェックポイントと、情報の信頼性を判断するための視点について解説します。
なぜ資金源が情報に影響を与えるのか
情報の発信者が、何らかの資金提供や広告収入を得ている場合、その資金源の意向に沿った情報発信が行われる可能性があります。これは、意図的なものから、無意識のうちに生じるものまで様々です。
- 営利目的: 特定の製品やサービスを販売したい企業が、自社に有利な情報のみを発信するケースです。製品のメリットを強調し、デメリットや他の選択肢に触れないなど、情報が偏る傾向があります。
- 特定の主張の推進: ある特定の治療法や健康法を広めたい団体や個人が、それを支持する情報だけを集め、反対意見や批判的な情報を無視するケースです。
- 広告収入: ウェブサイトやブログが広告収入を得ている場合、広告主に関連する製品やサービスに肯定的な記事が多くなったり、クリックを誘うためにセンセーショナルな表現が使われたりすることがあります。
このような背景を知ることは、情報の真偽を判断する上で非常に重要です。
資金源によるバイアスを見抜くためのチェックポイント
では、具体的にどのような点に注意すれば、資金源によるバイアスを見抜くことができるのでしょうか。以下のチェックポイントを確認してみてください。
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情報源の運営者を確認する:
- 誰がそのウェブサイトや記事を作成・運営しているのかを確認します。個人のブログなのか、企業のウェブサイトなのか、医療機関なのか、非営利団体なのかなどです。
- 運営者の「目的」は何でしょうか? 製品やサービスを販売すること、特定の考え方を広めること、単に情報提供することなど、その目的を推測します。
- 企業が運営するサイトの場合、その企業が提供する製品やサービスに関連する情報には、特に注意が必要です。
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資金提供や広告表示の有無を確認する:
- 記事やサイト内に「PR」「広告」「提供」「スポンサー」といった表示があるか確認します。これらの表示がある場合、その情報は資金提供者の意向が反映されている可能性が高いと考えられます。
- ウェブサイトの場合、フッターや「当サイトについて」「プライバシーポリシー」といったページに、運営資金に関する情報や広告に関する方針が記載されていることがあります。
- 動画の場合、冒頭や概要欄に資金提供者やスポンサーが明記されているか確認します。
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情報の偏りや極端な主張に注意する:
- 特定の製品や方法だけを「唯一の解決策」として強調していないか確認します。
- メリットだけを挙げ、デメリットやリスクについて全く触れていない場合は、情報が意図的に偏っている可能性があります。
- 「驚異の効果」「絶対」「奇跡」といった極端な言葉や、科学的根拠に乏しい体験談のみで効果を主張している場合は、特に注意が必要です。
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他の信頼できる情報源と比較する:
- その情報が、公的機関(厚生労働省、国立研究機関など)、信頼できる医療機関、専門家団体、査読付きの学術論文などで一般的に認められている情報と一致するか比較します。
- 複数の情報源で同じ内容が確認でき、かつ信頼できる情報源であれば、情報の確実性は高まります。逆に、特定の情報源でしか得られない情報や、既存の科学的知見と大きく異なる情報は、慎重に判断する必要があります。
信頼できる情報源との対比
資金源によるバイアスが比較的少ないとされる情報源には、以下のようなものがあります。
- 公的機関: 厚生労働省、国立感染症研究所、国立がん研究センターなど。国民の健康増進や病気予防を目的としており、特定の企業や製品に偏る情報は少ない傾向があります。
- 大学や研究機関: 中立的な立場で研究を行い、その成果を発表しています。ただし、研究資金に特定の企業などが関与している場合もあるため、研究そのものの質や発表論文の信頼性を確認することも重要です。
- 非営利の患者団体や専門家団体: 患者への適切な情報提供や、医療従事者への啓発を目的として設立されている場合が多く、特定の営利目的から独立している傾向があります。
これらの情報源も絶対的に中立とは限りませんが、営利目的の情報と比較すると、客観性や科学的根拠に基づいている可能性が高いと言えます。
誤った情報を他者に説明する際のポイント
身近な人が資金源によるバイアスを含む情報に影響されている場合、情報の「内容」だけでなく、その「背景」を伝えることが有効です。
- 「その情報は〇〇という企業のウェブサイトで見たものですね。その企業は△△という製品を販売しているので、製品に有利なように書かれている可能性があるかもしれません。」のように、情報源の背景と情報の関連性を客観的に伝えます。
- 情報の真偽を頭ごなしに否定せず、「他にこういう情報もありますよ」と、公的機関などの信頼できる情報源から得た別の情報を提示し、比較検討を促します。
- なぜその情報源に偏りがあると考えられるのかを、感情的にならず、論理的に説明するよう心がけます。
まとめ
健康情報に潜む資金源や広告表示によるバイアスを見抜くことは、情報の信頼性を判断する上で非常に重要なスキルです。情報の運営者、資金提供の有無、情報の偏りといった点をチェックし、常に複数の信頼できる情報源と比較する習慣を持つことが大切です。
情報リテラシーを高め、情報の裏側にある意図を意識することで、より正確な健康情報を選択し、自分自身や大切な人の健康を守ることにつながります。