SNSで見た健康情報、本当に信じられる? デマを見抜くチェックポイント
インターネット、特にソーシャルネットワーキングサービス(SNS)は、私たちの生活に深く浸透し、健康情報においても重要な情報源の一つとなっています。手軽に最新の情報にアクセスできる反面、誤った情報やデマが急速に拡散しやすいプラットフォームでもあります。信頼できる健康情報を見極めることは、自分自身の健康を守るだけでなく、周囲の大切な人たちにも正確な情報を伝える上で極めて重要です。
ここでは、SNSで目にする健康情報の真偽を判断するための具体的なチェックポイントと、デマに惑わされないための視点について解説します。
なぜSNSでは誤った健康情報が拡散しやすいのか
SNSには、誤った情報が広がりやすいいくつかの特性があります。
- 情報の断片化と手軽さ: 短い投稿や印象的な画像・動画で情報が共有されるため、背景にある文脈や根拠が省略されがちです。手軽に「シェア」や「リツイート」ができるため、内容を深く吟味することなく情報が拡散されます。
- 感情的な共感: 驚きや不安、喜びといった感情に訴えかける内容は、理屈よりも速く、広く伝わる傾向があります。特に健康や病気に関する情報は、人々の関心が高く、感情的な反応を引き出しやすいため、デマも感情的な表現を伴って拡散しやすいと言えます。
- アルゴリズムによる増幅: SNSのアルゴリズムは、エンゲージメント(「いいね」やシェアなど)が高い投稿を優先的に表示する傾向があります。たとえ誤った情報であっても、感情的に人々を惹きつける内容はエンゲージメントが高くなりやすく、結果としてより多くの人に表示され、さらに拡散するというループが生まれます。
- 情報源の不明確さ: 個人のアカウントからの発信が多く、その情報源や根拠が明確に示されていないケースが少なくありません。誰が、どのような目的で、どのような根拠に基づいてその情報を発信しているのかが分かりにくい点が、情報の信頼性判断を難しくします。
SNS健康情報の真偽を見分ける具体的なチェックポイント
SNSで健康情報に接した際には、以下の点を冷静にチェックすることが重要です。
1. 情報源を確認する
- 誰が発信しているか: 個人アカウントか、専門家、医療機関、公的機関、企業かなど、発信者の種類を確認します。個人の体験談は参考になることもありますが、科学的な根拠としては弱く、万人に当てはまるわけではありません。肩書だけでなく、その分野における実績や信頼性も考慮します。
- 信頼できる発信元か: 公的機関(厚生労働省、国立感染症研究所など)、大学や研究機関、専門学会などの公式サイトや、著名で信頼性の高い医療専門家のアカウントからの情報であれば、信頼性は比較的高いと考えられます。ただし、専門家を装った偽のアカウントも存在するため注意が必要です。
- 公式サイトへの誘導があるか: 情報の出典として、信頼できる組織の公式サイトや論文、専門的なデータベースへのリンクが示されているかを確認します。SNSの短い投稿だけでは判断せず、元の情報源を確認する姿勢が大切です。
2. 情報の根拠を確認する
- 具体的な根拠は示されているか: 「〜という研究で明らかになった」「〇〇大学の研究チームが発表した」といった根拠が具体的に示されているかを確認します。根拠が「個人の経験」「友人から聞いた話」「テレビで見た」「ネットで話題」といった不明確なものである場合は、信頼性が低いと考えられます。
- その根拠は信頼できるか: もし研究結果や論文が引用されている場合は、その研究がどのような規模で行われたか、査読付きの専門誌に掲載されているか、その研究を行っている組織は信頼できるかなどを可能な範囲で確認します。一部の研究結果だけを切り取って強調している可能性も考慮します。
- 専門家の見解か: 広く認められている専門機関や複数の専門家が同様の見解を示しているかを確認します。個人の独自の理論や、従来の常識と大きくかけ離れた主張には慎重な姿勢が必要です。
3. 表現の特徴をチェックする
- 極端な主張や断定的な表現: 「これを食べるだけで病気が完治する」「〇〇だけで絶対に痩せる」「危険な治療法」など、極端に効果を謳ったり、特定のものを一方的に否定したりする表現には注意が必要です。健康や医療に「絶対」や「万能」はほとんどありません。
- 感情的または不安を煽る表現: 「知らなきゃ損」「〇〇は危険」「業界が隠している真実」といった、読者の不安や好奇心を煽り、冷静な判断を妨げるような表現が多く使われている場合は、情報の信頼性が低い可能性があります。
- 過度な成功体験や体験談: 個人の劇的な改善例や成功談は、他の人にも同様の効果があるかのように誤解を招きやすい表現です。体験談はあくまで個人の事例であり、科学的根拠を示すものではありません。
- 科学用語の誤用や不正確な説明: 専門用語が不正確に使われていたり、科学的なメカニズムが都合よく単純化または歪曲されていたりしないかを確認します。
4. 拡散状況は信頼性の指標にならない
- 「いいね」やシェア数に惑わされない: SNSでの「いいね」数やシェア数は、その情報が多くの人に見られている、あるいは共感を呼んでいるという指標に過ぎません。情報の正確性や信頼性とは直接関係ありません。デマも急速に拡散することがあります。
5. 他の情報源との比較を行う
- 複数の信頼できる情報源で確認: SNSで得た健康情報について、安易に信用せず、必ず複数の信頼できる情報源(公的機関のサイト、専門医の解説、信頼性の高い医療情報サイトなど)で裏付けを取るようにします。他の情報源で全く言及されていない、あるいは内容が大きく異なる場合は、そのSNS情報は信頼できない可能性が高いです。
信頼できる情報源を見つけるには
SNSの外で、信頼性の高い健康情報を見つけるための情報源の例をいくつか挙げます。
- 公的機関: 厚生労働省、国立感染症研究所、国立がん研究センターなど。
- 専門学会: 各疾患や分野の専門学会。
- 大学や研究機関: 医学部や研究所の公式サイト。
- 病院や医師会: 大規模な病院の公式サイト、地域医師会のサイトなど。
- 信頼できる医療情報サイト: 運営元が明確で、医師や専門家が監修しているサイト。情報がいつ更新されたかも確認します。
これらの情報源は、科学的根拠に基づいた正確な情報を提供している可能性が高いです。情報を探す際には、まずこれらの情報源を優先的にあたることが推奨されます。
誤った情報を他者に伝える際のポイント
SNSで誤った健康情報を見かけた際、それを信じている友人や家族に正確な情報を伝えたいと思うことがあるかもしれません。その際には、以下の点に留意するとスムーズに伝わる可能性が高まります。
- 感情的にならず冷静に: 相手が信じている情報を頭ごなしに否定すると、かえって反発を招くことがあります。感情的にならず、落ち着いたトーンで接します。
- 「なぜ」誤りなのかを具体的に説明: 単に「それは間違いだ」と言うのではなく、「〇〇という公的機関の発表では〜となっています」「〜という研究ではそのような結果は出ていません」など、具体的な根拠を示して説明します。
- 信頼できる情報源を提示: 相手自身が確認できるよう、信頼できる情報源(公的機関のサイトの該当ページなど)の情報を提示します。
- 共感を示す姿勢: 相手がなぜその情報を信じたのか、不安な気持ちがあったのかもしれない、といった背景に理解を示しつつ、「心配なお気持ちは分かりますが、この情報にはこのような懸念点があります」というように伝える方が、受け入れられやすくなります。
まとめ
SNSは便利な情報ツールですが、健康情報に関しては特に慎重な利用が求められます。安易に「いいね」やシェアをせず、常に情報源と根拠を確認し、極端な表現や感情的な訴えに注意を払うことが、誤った情報に惑わされないための基本です。複数の信頼できる情報源で情報をクロスチェックする習慣をつけ、批判的な視点を持つことで、自分自身と周囲の人々を不確かな情報から守ることができます。情報リテラシーを高めることは、現代社会において、自分自身の健康を守る上で欠かせないスキルと言えるでしょう。