テレビ番組や雑誌の健康情報、その信頼性をどう見極めるか:見えない意図と科学的根拠のチェックポイント
インターネットだけでなく、テレビ番組や雑誌も私たちの情報源として非常に身近な存在です。特に健康に関する情報は、多くの人が関心を持つテーマであり、これらの媒体でも頻繁に取り上げられます。テレビや雑誌は編集を経て提供されるため、インターネット上の無秩序な情報に比べて信頼できると感じやすい傾向があるかもしれません。しかし、これらの媒体の情報にも、その特性ゆえに見極めるべきポイントが存在します。
テレビ・雑誌の健康情報に見られる特徴と注意点
テレビ番組や雑誌の健康情報は、専門家が登場したり、分かりやすいグラフィックや事例で解説されたりすることが多く、内容が理解しやすいという利点があります。視覚的に訴えかける力も強く、情報が印象に残りやすいでしょう。
しかし、テレビや雑誌は限られた時間や紙面の中で情報を伝える必要があります。そのため、情報の詳細が省略されたり、一つの側面が強調されたりする可能性があります。また、視聴率や販売数を意識した構成や、スポンサーとの関連性など、情報の伝え方に編集意図が強く反映されることも少なくありません。結果として、科学的根拠が十分でない情報や、特定の製品・サービスに誘導するような内容が紛れ込む可能性も否定できません。
テレビ・雑誌の健康情報の信頼性を見極めるチェックポイント
テレビや雑誌で得た健康情報について、その信頼性を判断するために、以下の点に注目してみましょう。
- 情報源の明確さ: その健康情報は、どのような研究に基づいているのでしょうか。誰が、どのような立場で発言しているのでしょうか。公的な機関や信頼できる研究機関、専門家の名前が具体的に明示されているかを確認します。ただし、名前が出ている場合でも、その専門家が本当にその分野の権威であるか、過去に信頼性の低い情報を発信していないかなどを調べてみることも有効です。
- 科学的根拠のレベル: 「〜に効果があると言われている」「個人の体験談では〜」といった表現は、科学的根拠としては弱いものです。ヒトを対象とした信頼性の高い臨床試験などに基づいているかを確認します。テレビや雑誌では研究の詳細までは触れられないことが多いため、紹介された内容のキーワードを元に、信頼できる情報源(後述)で補足情報を探す姿勢が重要です。
- 情報のバランス: その健康法や食品の良い面だけが強調されていませんか。考えられるリスクや副作用、効果には個人差があることなど、不利な情報や注意点も併せて伝えられているかを確認します。メリットだけを過度に強調する情報は注意が必要です。
- 極端な主張や断定的な表現: 「これだけで病気が治る」「絶対に痩せる」といった、あまりにも効果を断定する表現や、特定の食品や方法に「奇跡の」「秘密の」といった言葉が使われている場合は、誇大広告やデマである可能性を疑う必要があります。医学や健康に関する情報は、多くの場合、特定の要因だけで劇的な効果が得られるわけではありません。
- 情報の古さ: 番組が放送された時期や雑誌の発行日を確認します。医学や栄養学の研究は日々進歩しており、古い情報が現在の常識とは異なっていることも少なくありません。最新の研究に基づいているかどうかも判断の一助となります。
信頼できる情報源との比較・補完
テレビや雑誌の情報は、新しい知識への関心を高めるきっかけとしては有用です。しかし、そこで得た情報を鵜呑みにせず、必ず他の信頼できる情報源で内容を確認・補完することが重要です。
信頼できる情報源としては、以下のようなものが挙げられます。
- 厚生労働省、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所などの公的機関のウェブサイト
- 大学や研究機関の公式情報
- 信頼性の高い医療機関(大学病院など)のウェブサイト
- 専門学会の公式情報
- PubMedなどの論文データベース(ただし、論文の解釈には専門知識が必要な場合があります)
テレビや雑誌で興味を持った情報について、これらの情報源で検索し、同じような情報が見つかるか、より詳細な科学的根拠が示されているかなどを比較検討することで、その情報の信頼性をより正確に判断することができます。
テレビ・雑誌の健康情報を他者に伝える際の注意点
テレビや雑誌で得た健康情報について、身近な人から質問されたり、自分が学んだことを伝えたりする機会があるかもしれません。その際は、情報の受け取り方に注意が必要であることを伝えると共に、特定の情報を断定的に伝えすぎないよう心がけることが大切です。
例えば、「〇〇というテレビ番組で紹介されていた健康法ですが、良い面が強調されているようでした。他の情報源でも確認してみると、このような注意点もあるようです」といったように、自分が情報の信頼性をどのように判断したか、他の視点も存在することを併せて伝えると、相手が情報を鵜呑みにせず、多角的に考える手助けとなるでしょう。
結論
テレビ番組や雑誌は、健康に関する情報を分かりやすく提供してくれる身近な媒体です。しかし、その情報には時間的制約や編集意図が影響している可能性があることを理解しておく必要があります。番組や雑誌で得た情報を鵜呑みにせず、今回ご紹介したチェックポイントを参考に、他の信頼できる情報源と照らし合わせて情報の真偽を判断する習慣をつけましょう。多様な情報源に触れ、批判的な視点を持つことが、健康情報に賢く向き合うための第一歩となります。